線香花火

「え、ここでやるの?」

私は顔をひきつらせた。

さすがに家の前では
やりたくない。

ここは国道沿いの住宅街。

夜になれば人通りは
少なくなるが、車の
通りは昼間と変わらず多い。

そんな中でやるのも
恥ずかしくて出来ない。

しかも、それ以前に
花火の綺麗な光さえ見えない。

「嫌か?」

亜樹斗は短く聞いた。

私は頷いて

「ここじゃ、花火の
光が見えないよ」

と言った。

亜樹斗はうーん、と
首を傾げて

「よし。じゃあ公園に行こう。
それなら、花火の光も
見えるだろう?」

小さい子供に話し掛けるように、
私の視線に合わせて優しく
亜樹斗が言った。
< 4 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop