線香花火
「え、ここでやるの?」
私は顔をひきつらせた。
さすがに家の前では
やりたくない。
ここは国道沿いの住宅街。
夜になれば人通りは
少なくなるが、車の
通りは昼間と変わらず多い。
そんな中でやるのも
恥ずかしくて出来ない。
しかも、それ以前に
花火の綺麗な光さえ見えない。
「嫌か?」
亜樹斗は短く聞いた。
私は頷いて
「ここじゃ、花火の
光が見えないよ」
と言った。
亜樹斗はうーん、と
首を傾げて
「よし。じゃあ公園に行こう。
それなら、花火の光も
見えるだろう?」
小さい子供に話し掛けるように、
私の視線に合わせて優しく
亜樹斗が言った。