線香花火

「うん」

と短く返事をして、
私は笑った。

「じゃあ、バケツを
持ってかないとな。
俺の家から持っていこう」

「そうだね」

私達は、亜樹斗の家に向かうと、
亜樹斗は玄関で待つように
私に言い、「母さん、バケツー」
と言いながら部屋の奥に
消えていった。

私の家と亜樹斗の
家は隣同士だ。

だから、用があれば
亜樹斗に頼めるし、
お互いの窓から
話すこともできる。

私は小さい頃から、
亜樹斗が好きだ。

一緒に育って、毎日のように
走り回った仲だ。

でも、私を振り回して
遊ぶ亜樹斗を私は
好きになれなかった。

次はあそこだー、とか言って
私がヘトヘトになるまで
走って私を振り回す。

そんな亜樹斗が苦手だった。

だけど、徐々に成長
していくに連れて
亜樹斗も大人になっていった。
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