線香花火
「おい、どうした?ボーッとして」
亜樹斗は心配そうに
私の顔を
覗きこんだ。
「あ、ううん。なんでもないよ」
私は慌てて亜樹斗の
顔を遠ざけた。
「そうか?ならいいけど。
何かあったら言えよ?」
「うん。ありがとう」
私は笑って玄関の
外に出た。
その後に亜樹斗も出てきて
私達は近所の公園に向かった。
歩いて5分ほど経っただろうか。
緑色のフェンスの向こう側に
小さく光る街灯を見つけた。
更に向こう側には
滑り台とブランコが見える。
昼間は子供達の声で
賑わうが、夜になると
ひっそりと暗い雰囲気を
醸し出している。
昼の顔と夜の顔が
二つあるみたいだ。
「よし、ここでいいだろう」
茶色いベンチの近くに
腰を下ろして亜樹斗が言った。
「そうだね」
私も亜樹斗の隣に
腰を下ろした。
亜樹斗が持っていた
花火の封を開けて
花火を一本
取り出して私に渡した。
そして、ポケットから
ライターを取り出すと
私が持っていた花火に
火を付けた。
そして、自分の分の
花火にも火を付けた。
パチパチと音がして、
オレンジと黄色の
見事なコントラストが鮮やかだ。