線香花火
そしてまた、火を付ける。
そんなことを繰り返して
いるうちに、残りの花火は
線香花火だけになった。
「やるか?」
亜樹斗が聞く。
「やるに決まってんじゃん!」
私は即答して
線香花火をせがんだ。
「じゃあ、競争しよう。
長く残ってた方が勝ち」
「何それー。
長く残ってた方が願いが
叶うんじゃなくて?」
私はぷくっと頬を
膨らませて不満を言う。
「いいから!やろうぜ、な?」
白い歯を見せて
亜樹斗が笑う。
そんな顔をされたんじゃ
断るにも断れない。
私は亜樹斗の笑顔に弱い。
「わかったよ」
そう言って、亜樹斗が
花火に火を付けるのを待つ。
しゅぼっと音がして
パチパチと線香花火が
音をたてる。
「うわー、負けたらやだなあ」
なんて言いながら
私は線香花火を見つめた。
「どっちが勝つか楽しみだ」
私とは反対に、亜樹斗は
楽しそうにしていた。