Moon_and_sun
衝突
新しい出逢い。
近付いてくるのは、終わりの足音。
ふ、と意識が覚醒する。
見覚えのある天井に、ああ、またか…と綾は柔らかなシーツから体を起こす。
貧血で倒れてしまうのも、気怠い体も、最近やっと慣れてきた。
「っ、」
ずくりと鈍く痛む首に触れる。
傷口に触れようとした手が布に触れて、いつものように美波がガーゼを貼ってくれているのに気付いた。
日常と化すその生活の中でも、まだこの痛みには慣れないでいる。
頭の芯がぼやけたような感覚を無視して、綾はベッドを出た。
「――、――」
リビングへ続くドアの前に立つと話し声が聞こえて、美波一人ではない様子に綾は少し嬉しくなる。
貧血の原因は高瀬なのに、目を覚ますといつも無性に高瀬に会いたくなった。
綾が目を覚ますまでに帰ってしまうことが多いから、余計に。
しかし、期待して開けたドアの向こうには見知らぬ茶髪。
「あら、おはよう。気分はどう?」
「う、ん…大丈夫…」
「なになにー?可愛い子だねぇ、美波ちゃんの妹?」
「違うわよ。綾ちゃん、こっち座りなさい」
美波に示されてソファーに座ると、キッチンのカウンターに座っている茶髪の男ににこにこと笑顔を向けられる。
「綾ちゃんって言うの?僕、鈴木将っての。よろしくね」
「はあ…」
綺麗な弧を描く口元に反して、全く目が笑っていない。
それどころか何かを探るような目に、助けを求めるような視線を美波に向ける。
「気にしなくて良いわよ。ココア飲む?」
「…飲む。高瀬さんは…?」
「ちょっとお使い頼んだの。もう戻るわ」
「ふぅん…高瀬さん、知ってるんだ?」
意味ありげに呟いて、鈴木は目を細める。
鈴木の視線にとうとう俯いてしまった綾に、美波は咎めるように鈴木を呼ぶ。
「将くん」
「いやぁ、どういう関係かなぁと思って。…ねぇ、高瀬さん?」
鈴木は、音もなくいつの間にか入り口に立っていた高瀬に視線を投げる。
「……別に。気にするな」
「その間が気になるんですよー」
それに、とわざと言葉を切って、高瀬から綾に視線を移す。
「…気にしなきゃいけない立場だし?」
「…消えろ」
「やだやだ、怖~い」
睨み付けてくる高瀬を気にすることもなく、ふざけたように笑いながら立ち上がると、鈴木は綾へと歩み寄る。
綾が反応するより速く、綾の襟元を首筋が見えるように開いた。
「っ、きゃ!?」
「コレ、何?…あんた、この子に何したの?」
首筋に貼られていたガーゼを一気に剥がすと、高瀬の牙につけられたその傷に嫌悪感を露わにする。
近付いてくるのは、終わりの足音。
ふ、と意識が覚醒する。
見覚えのある天井に、ああ、またか…と綾は柔らかなシーツから体を起こす。
貧血で倒れてしまうのも、気怠い体も、最近やっと慣れてきた。
「っ、」
ずくりと鈍く痛む首に触れる。
傷口に触れようとした手が布に触れて、いつものように美波がガーゼを貼ってくれているのに気付いた。
日常と化すその生活の中でも、まだこの痛みには慣れないでいる。
頭の芯がぼやけたような感覚を無視して、綾はベッドを出た。
「――、――」
リビングへ続くドアの前に立つと話し声が聞こえて、美波一人ではない様子に綾は少し嬉しくなる。
貧血の原因は高瀬なのに、目を覚ますといつも無性に高瀬に会いたくなった。
綾が目を覚ますまでに帰ってしまうことが多いから、余計に。
しかし、期待して開けたドアの向こうには見知らぬ茶髪。
「あら、おはよう。気分はどう?」
「う、ん…大丈夫…」
「なになにー?可愛い子だねぇ、美波ちゃんの妹?」
「違うわよ。綾ちゃん、こっち座りなさい」
美波に示されてソファーに座ると、キッチンのカウンターに座っている茶髪の男ににこにこと笑顔を向けられる。
「綾ちゃんって言うの?僕、鈴木将っての。よろしくね」
「はあ…」
綺麗な弧を描く口元に反して、全く目が笑っていない。
それどころか何かを探るような目に、助けを求めるような視線を美波に向ける。
「気にしなくて良いわよ。ココア飲む?」
「…飲む。高瀬さんは…?」
「ちょっとお使い頼んだの。もう戻るわ」
「ふぅん…高瀬さん、知ってるんだ?」
意味ありげに呟いて、鈴木は目を細める。
鈴木の視線にとうとう俯いてしまった綾に、美波は咎めるように鈴木を呼ぶ。
「将くん」
「いやぁ、どういう関係かなぁと思って。…ねぇ、高瀬さん?」
鈴木は、音もなくいつの間にか入り口に立っていた高瀬に視線を投げる。
「……別に。気にするな」
「その間が気になるんですよー」
それに、とわざと言葉を切って、高瀬から綾に視線を移す。
「…気にしなきゃいけない立場だし?」
「…消えろ」
「やだやだ、怖~い」
睨み付けてくる高瀬を気にすることもなく、ふざけたように笑いながら立ち上がると、鈴木は綾へと歩み寄る。
綾が反応するより速く、綾の襟元を首筋が見えるように開いた。
「っ、きゃ!?」
「コレ、何?…あんた、この子に何したの?」
首筋に貼られていたガーゼを一気に剥がすと、高瀬の牙につけられたその傷に嫌悪感を露わにする。