お熱いのがお好き?
すぐ下に身につけていたブラジャーに異変はなく、パンティーもしっかり穿いていた。
「良かった…」
麻紀はホッと胸を撫で下ろした。
変わったことと言えば、ヘアクリップでまとめていた髪が下りていることくらいだ。
ヘアクリップは、ベッドサイドのナイトテーブルにちょこんと置かれていた。
「おはよう。起きたんだ。
夕べはだいぶ飲んでいたけど、大丈夫?」
麻紀が起きたことに気が付いた男は、コーヒーカップ片手に穏やかな笑顔を見せた。
中肉中背。
二重まぶたの目尻の優しいシワが印象的なその男の髪には、ちょっと古臭いウェーブが掛かっていて、麻紀と同年代と思われた。
「え….」
麻紀は頭を抱える。
目の前にいる男が誰なのかも、ここが誰の部屋なのかも、どうしてここにいるのかも謎だった。
だから、1番始めに何を質問していいのかもわからなくて、麻紀はベッドの上で呆然としていた。
男は麻紀の混乱を察したようだった。
「覚えてないの?
俺が1人でカウンターで飲んでいたら、そっちから声を掛けてきたんだよ。
まあ、貴女、ベロベロに酔ってたから、覚えてなくても仕方ないけど。
部屋まで送るよって言っても、部屋番号教えてくれないし。
仕方なく俺の部屋に連れてきちゃったけど、俺はソファで寝たし、何もしてないよ。安心して」