お熱いのがお好き?
『…雲海テラス…』
天からの声のように、ふいにそのフレーズが耳元を掠めた。
「雲海テラス…?」
何気なく、麻紀はその言葉を反芻する。
ハッとした。全身からサーッと血の気が引く。
「う、嘘…今何時…?」
随分寝てしまった気がした。カーテンから漏れる陽の光は、もう日の出をとっくに過ぎてしまった証拠だ。
子供達と早朝4時に起きて雲海テラスを見にいくツアーに参加する予定だったのに。もう間に合わないのは間違いない。
そろそろと上体を起こし、ナイトテーブルに付いた時計を見る。
『AM:09:00』
「きゃあああ!」
そのデジタル文字を見た瞬間、麻紀は思わず悲鳴を上げた。
そしてまた、カミナリのようなズキリとした痛みに襲われる。
「イテテ、嘘お…」
あまりの事に気が遠くなってきた。
雲海テラスに間に合わないどころか。
朝食のバイキングすら、間に合うかどうか。
「子供達、お腹を空かせて私を待っているかも…」
部屋に据え付けられたデスクのうえに麻紀のショルダーバッグが置かれているのが目に入った。
急いでベッドから降り、バッグの中を探って携帯を取り出す。