お熱いのがお好き?


朝、起きて母親の姿がないことに気が付いた子供たちは、パニックに陥ってしまったかもしれない。


うっかり、携帯をマナーモードにしたままだった。

一番年長の竜聖が不安がる妹と弟を宥めながら、麻紀の携帯に何度も連絡したに違いない。



「あれれ…?」


さぞかし着信記録が入っていると思いきや、携帯の画面には、1件の留守録が入っていることのメッセージが表示されているだけだった。



「んん……?」


完全に肩透かしだった。


携帯を見つめながら、麻紀は呆然とする。とは言え、留守録は竜聖が入れたものに違いない。



ーーママ、どこにいるの?大丈夫なの?



麻紀を心配する竜聖の声が聞こえた気がした。


「竜聖、梨花、雄哉…ゴメン……
せっかく楽しみにしていたのに。ママ、本当に大馬鹿もんだわ…」



目の奥が熱くなり、涙で視界が滲んだ。

自分が情けなくて情けなくて何時の間にか、麻紀はボロボロと涙をこぼした。


泣いたのなんて、本当に久しぶりだった。


涙を垂れ流しながら、震える指でボタンを押し、メッセージを聞く。





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