お熱いのがお好き?
機内では窓際から、雄哉(ゆうや)、麻紀、梨花(りんか)。
通路を挟んで、梨花の隣に竜聖(りゅうせい)という順番で座った。


ぽっちゃり体形の麻紀は、座席がきつい。

座席の手摺は左右共、麻紀のものになった。


「ん、もう。これだから、私、エコノミーって嫌なのよ!」


エコノミーしか乗ったことがないのに、麻紀は愚痴をこぼす。


竜聖の隣は、年齢不詳のTシャツにジーパン姿の女で、麻紀よりさらに太っている。

竜聖は、その女を避けるように通路側のひじ掛けに身を寄せて腰掛けていた。


小1の雄哉は、朝、麻紀に逢った時からずっとはしゃぎ、全く落ち着かなかった。


搭乗する前から「僕は窓際ね」と兄と姉にうるさく言い、座席に着くなり早速、「ママ、喉、渇いたー、ジュースが飲みたい」と言い出す。


「雄哉、ジュースばっかり。だめよ、虫歯になるから」


お姉さんぶって梨花が言う。


麻紀ははふと、このセリフはいつも葉子が言っているのだろうと感じた。


「いいよ。ジュースで。せっかくの旅行なんだもん。
雄哉、あとでスチュワーデスさんがジュースを配り始めるから、もう少し待っていて」


麻紀が明るく言った。


「うん!」


雄哉が素直にうなづくのを見て、
やっぱり、この子が一番可愛い、と麻紀は思う。


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