お熱いのがお好き?
このところ、日本列島は猛暑続きで北海道も例外ではない。
ただ、今日は少し雲が出て、風があり、幾分過ごしやすい。
「皆さん、ラッキーですよ!」と現地添乗員の中年男が言った。
北海道の広大な緑の景色に、麻紀も子供達も感嘆する。
蕎麦の白い畑。牧場の牛達。
南瓜やアスパラガスなどの野菜の畑。
どれもとんでもなく広い。
トマムの30階建タワーホテルは、突如としてその姿を車窓から景色を眺める麻紀たちの前に現れた。
昭和80年代に建てられたこのホテルは外から見ても、バブル期の名残を充分に漂わせてる。
都会からひょいと持ってきたような建造物は、北海道の大自然には少しそぐわない気がしないでもない。
「わあ!すごい!」
チェックインを済ませた子供たちは割り当てられた28階の部屋の窓からの眺望に歓声を上げた。
少し曇っているけれど、北海道の美しい山並みが、まるで立体の絵画のようだ。
「ママぁ、見て見て!下の芝生に鹿さんがいる!」
窓に張り付いていた梨花が、下を見て叫んだ。
「うわあ、すごい!本当だあ」
竜聖も雄哉も窓ガラスにヤモリみたいに手を広げて張り付く。