お熱いのがお好き?
『……当ホテルで使えるお食事券をご用意させて頂きました。
ホテルでのお食事は、すべてこのチケットをお使い下さい。
どうかこれでご容赦を…』
ーーえっ!
振り上げた拳をさっさと降ろし、麻紀は途端にご機嫌になる。
『ま〜ここまでしてくれなくてもいいのに〜そんなつもりじゃないのに〜』
おほほほほと笑いながら、麻紀はマネージャーの手から封筒を奪い取った。
去年の出来事に味をしめたわけじゃない。
今回、予約しているホテルの部屋はファミリータイプで、洋室ふた部屋が連なり、各部屋にシングルベッドが2台設置されている。
清潔で広さも充分。
畳敷きのスペースもある。
ラベンダー畑を描いた水彩画やデスクに置かれたすずらんの形のランプも含め、インテリアも素敵だ。
エレベーターがノロい事以外は、なんの問題もない。
子供達が嫌がることだし、ここは我慢しようじゃないか…
段々、高さにも慣れてきたし。
「そんじゃあ、夕飯の前に大浴場でも行こうかっ!?」
麻紀は気を取り直し、上機嫌で子供達を誘った。