お熱いのがお好き?
(どのタイミングで出そうか…)
冷静に考える。
バッグの中には麻紀の秘策が隠されていた。
◇◇◇
「夕飯の前に温泉に入ろう?」
という、麻紀の提案に3人の子供達は乗ってこなかった。
携帯ゲーム機で「通信して3人で対戦したいんだよ」と竜聖が言う。
「ハア?ツウシン?」
麻紀には、なんのことやらわからない。
竜聖、梨花はもちろん、小1の雄哉までそんな目に悪そうなゲーム機を持っていた。
(あのババア…子供にそんなものばかりやらせて、自分は2時間ドラマばかり観ているに違いない!)
「ママとお風呂入ると長くてイヤ。
のぼせそうになるんだもん。
去年、梨花、箱根のお風呂で倒れそうになったもん!」
梨花はそう言い放ち、ゲームに夢中で、麻紀の方を見ようともしない。
子供たちと電話では時たま話すが、顔を合わせるのは、3月に4人で横浜中華街で食事をしてから半年振りなのに。
もちろん、無理に合わせろとはいわないけれど、こんなに冷たくされていいもんだろうか……
麻紀はちょっと悲しくなった。
でも、まあいい。
すぐに気を取り直し、1人で温泉に入ることにした。
楽天家なのが麻紀のいいところだ。
子供達に部屋で大人しくしているように言い含めた。