お熱いのがお好き?
(お、落ち着け。あれが私の陰謀だってこと、この子は知りゃしないんだから…)
「やっだあ!
こんなところで逢うなんて、すっげえ偶然!うわあ、でもなんか嬉しい〜」
カレンは、麻紀の右手を両手で掴んで、飛び跳ねるようにはしゃいだ。
(言葉使い悪……美人も台無しね。
お里がしれるわ…)
言葉使いの悪さは自分も負けていないのに、自分のことは棚に上げて麻紀は呆れた。
「おい。カレン!行くぞ」
少し離れた場所にいたムラサキ色のポロシャツを着た中年男がま、不機嫌そうにカレンに声を掛ける。
男の左手薬指には、指ぬきみたいな金の指輪がはまっていた。
角張った顔に薄茶に染めたパンチパーマが伸びたようなヘアスタイルで、一目で普通のサラリーマンではないと分かる容貌だ。
「うぜえなあ!ちょっと待っててよ!
カレン、この人と話がしたいんだからあ」
カレンの父親だろうか…
麻紀の視線に気付いたカレンは、麻紀のすぐ横にすっと移動し、耳元で囁いた。