お熱いのがお好き?


清志は、麻紀が子供達と北海道に行っている間、千葉にある清志の両親の墓参りに行く、と言っていた。


近くに叔父夫婦が住んでおり、そこに一泊すると。

叔父夫婦は、清志の親代わりの存在だ。



清志は、はっきり言わないけれど、彼らは、3人の子持ちでバツイチの麻紀との結婚を猛烈に反対しているらしい。


「叔父さんたちにも心から祝ってもらいたいから、時期が来るのを待とう」

などと言葉を濁して清志は言うが、
麻紀だってそのくらい察しがつく。


だから、麻紀と清志は戸籍上は他人だった。


「フランス風だよね~」


フランスでは、未入籍の夫婦が多いことにかけて麻紀はおどけるが、ここは日本だ。

やっぱりちゃんとしたかった。


でも、こういう問題はとてもデリケートだ。

しつこく言って清志に嫌われたくなかった。


日常生活においては、夫婦同然なのだから、これでいい、と割り切るしかない。




「…ママ、大丈夫?」


はっと気付くと、目の前に不安そうな梨花の顔があった。結構長い間、ボケッとしていたらしい。


「あっああ、なんでもないよ!
お寿司見てたら、なんだか眠気がしてきちゃって。

クルクル廻るじゃない?
催眠術に掛かっちゃったあ~。なんちゃって」




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