お熱いのがお好き?
(おかしい……ははーん…)
麻紀は気付いた。
旅行の日程は、親権者の元夫・真和の方に伝えていた。
子供たちは、祖母がこっそり付いて来る事を知っていて、麻紀に知らせまい、としていたのだろう。
……グルだったんだ。
さすがの麻紀もこれには、ムッとした。
麻紀の不機嫌を察した葉子は早速、小皿に醤油を次ぎながら、賑やかに1人で騒ぐ。
「まあー!美味しそう!さすがに北海道ねえ!ここはね、私に支払い任せて。
奢っちゃうから!
ほらほら、竜聖も梨花も雄ちゃんもどんどん食べなさいよ!
ほら、中トロ廻ってきたよ!
梨花、おばあちゃんにその中トロ、取って頂戴!」
無邪気を装いながら、あえて葉子は向かいにいる麻紀と目を合わせようとしない。
麻紀は葉子の『支払いは任せて。奢っちゃう!』と言う言葉に敏感に反応した。
それなら話は別だ。
「まあ、お義母さん、いいんですか?ご馳走になってしまって…」
こんなババアとなんて喋りたくなかったが、確認の為に言うと、いやあね!と言うように葉子は、右の掌をカクンと振り下ろす仕草をした。