お熱いのがお好き?
「梨花、雄哉、このホテルでスタンプラリーやってるって。
用紙もらってやろうぜ」
「わあ、やるやる!なんか貰えるって書いてあったよね?」
「僕もやるう」
「ママ、僕たち、3人でスタンプラリーやってから、部屋に戻るからね!」
デザートを食べ、満腹になった竜聖が言い出して妹と弟を連れ店を出てしまった。
汚れた皿やコップの散乱するテーブルには、麻紀と葉子だけが取り残された。
「そう。頑張ってね〜おばあちゃん、応援してるから〜」
酒に弱い葉子は、コップ1杯のビールで顔面が真っ赤だ。
(おかしい…このオバサン、ビールなんか好きではなかったはず…)
麻紀が疑問を感じたその時だった。
「うっ…」
葉子が突然、両手で顔を覆い、泣き出した。
(えっ、な、何⁉。場違いな…)
麻紀はイライラした。
葉子の泣きは演技だとバレバレで涙が全く出ていなかった。
午後7時を過ぎ、店は混雑のピークだ。
掻き入れ時であり、店の出入り口には順番待ち客の行列が出来ているというのに。
食べ終わったくせにいつまでもグズグズしているなんて、格好悪かった。
店員の視線も冷たい。
手早く話を終わらせる必要があった。
「お義母さんどうしたんですか?顔を上げて下さい」
渋々言った。