お熱いのがお好き?
「ママ、少しだけお出掛けするね…すぐ戻るから」
麻紀はそういって、雄哉の柔らかい頬っぺたにキスをした。
1度寝たら、子供達はめったなことでは起きたりしない。
トイレで起きたとしても、またベッドに入ればすぐに寝てしまう。
だけど、今夜は環境が違う。
[ママは、昼間、偶然出会った昔のお仕事仲間(※注※女)とホテルのバーに行きます。
すぐに戻るけれど、何かあったら、ママのケイタイに連絡すること!]
もしも、子供達が夜中を起きてしまった時の為に、ホテル備え付けのメモ帳にメッセージを書き、テーブルの上に置いた。
昔、子供が寝静まってから、深夜のレジ打ちのパートに出掛けていた時のように。
ラウンジ&バー[白樺]は、ホテルの地下階にあった。
知らない場所に1人で行くのは、麻紀は苦手だ。
意外にこういうことには臆病だった。
怖々重たいガラス扉を開け、中に入ると、バーと言うよりも薄暗い喫茶店みたいな感じだった。
ピンクのカーネーションを活けた一輪挿しがテーブルひとつひとつに置かれていた。
昼間は、普通に喫茶店なのだろう。
結構広い。