お熱いのがお好き?
客はまばらだ。

夏休みで宿泊客はファミリーが多い。

子供がいては、夜、飲みになど行くことが出来ないのだろう。


店内の片隅には、カラオケセットが置かれ、酒の入ったおじさんおばさんグループがカラオケに興じていた。

そのせいで結構、うるさかった。



「あっ!麻紀さあん!カレン、ここです!」


店の中ほどの4人掛けのテーブル席にいたカレンが、立ち上がり、跳ねるようにして麻紀に向かって手を振る。


昼間より更に露出度が増して、鮮やかなレモン色のスリップドレスを着ている。

白くて華奢な肩が剥き出しになっていた。


それでも、なぜかいやらしい感じがしない。あくまで爽やかで可愛らしかった。



(あら…麻紀さんだって…)


「はあい。おマタしてごめんねえ!」


手を振りながら、麻紀は軽いノリで答えた。得意のモンローウォークでカレンのいるテーブルへ歩み寄る。


今までカレンには、ずっと『高木さん』と呼ばれていた。


(いきなり名前で呼ぶなんて、さすがに今時の若い子…
でも、私、離婚したから、もう高木じゃないのよね。
旧姓の鈴木なのよ。

まあ、いっかあ。ぶつぶつ説明するのも面倒臭いし。今夜限りでもう2度逢うことないんだし…)



< 74 / 110 >

この作品をシェア

pagetop