お熱いのがお好き?


よくあると言いつつ、麻紀には男にしつこく付き合えと言われたことも、そんなピンチを救って貰ったことももちろんなかった。


(自慢話はキライよ……)
と思う。



「そうなんです!
マー君、すごーく格好良くて。
そのお客の襟首を掴んで、お店の外に放り出しちゃったんです!

マー君、昔、柔道やっていて、何度も大会にも出てたって。
あちこちの大学からもうちで柔道やらないかって声が掛かったけど、商売やりたいから、大学には行かなかったんだって。

この商売、学歴はハナクソみたいなもんだからって。

だから、カレンも高校中退なんて気にするなって、言ってくれたの」


「高校中退?」


カレンの言葉に麻紀は目を見開いた。カレンは上目遣いに言う。


「…麻紀さん、知ってますよね?
あのスーパーで、エミとミキが万引きしてて、カレンまで疑われちゃったの…」


ドキーン!


麻紀の心臓が止まりそうになり、食べかけていたポテトフライがポロリと指から滑り落ちた。


そ、そんなこともあったねえ、と言った声が見事に裏返った。



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