お熱いのがお好き?


20歳で真和を生んだ葉子は57歳。


気持ちも若く、身体もすこぶる健康な葉子は暇を持て余していた。


利己的で協調性がないから、働くのは本人も無理だとわかっていて、
(結婚してから、ずっと専業主婦だったことを誇りにしている)
友人との旅行や、絵手紙のサークル、公民館での子供たちの為の絵本の読み聞かせなど、趣味を生き甲斐にしていた。



それだけなら、よかった。


麻紀が許せなかったのは、日中、突撃するようにうちを訪ねてくる事だった。

曜日時間、天気、関係なく。


それが結婚以来、10年間続いていた。

迷惑としかいいようがなかった。


何度か、夫の真和を通じて「うちにくる時は、前もって一言連絡をするように」
と言ってもらったけれど、なんの効き目も無かった。


かぼちゃが安かっただとか、イワシが多いからもらってくれとか。


麻紀にとっては面倒臭いものばかり。


小学4年の長男竜聖、1年の梨花、4歳の雄哉。


3人の子育てと家事、深夜パートの為の仮眠に追われて、好きなテレビさえ、ゆっくり観れないのに、いきなり、透明ビニール袋に入った血にまみれたイワシなんか差し出されても迷惑だった。


調理したものなら大歓迎なのに。




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