お熱いのがお好き?
「……カレンは悪くない。
悪いのは、カレンの手だからって。
悪い手はきれいにしなきゃ…って言って、カレンの指を自分の口の中に入れたんですう!
パクって、こんな風に!」
カレンは、自分の右手真ん中3本を、中程まで口の中に入れてみせた。
カレンの肉厚なピンク色の唇がポカンと開くさまは、なにかエロティックだった。
「ぎぇー!気色悪ー!!」
麻紀はあたり憚らず、叫んだ。
カラオケおばさんおじさんグループが振り返り、こちらを見た。
「な、なんてことすんの、あのおっさん…」
麻紀はジョッキを持ったまま、頭を抱えた。
あの店長は、当時54歳独身。
趣味はバードウォッチング。
決して悪い人ではなかったけれど、女っ気が全くないことから、あっち方面の趣味ではないかとパート主婦達の間では噂されていた。
それなのに、そんな変態だったとは…
麻紀は少しだけ、良心が痛んだ。
店長の性癖を責める前に、まだ高校生だったカレンをそんな状況に追い込んだのは、自分自身だと分かっていた。