お熱いのがお好き?
麻紀には『世間知らずの小娘の戯言』としか聞こえない。
麻紀が聞きたかったのは、死ぬの生きるの大騒ぎのドロドロ愛憎劇だ。
カレンの話はもう飽きた。でも嫉妬していると思われたくないので、一応、「素敵な話だね!」と投げやりに言っておいた。
男女の行為をすることによって愛が成就したと感じる麻紀には、プラトニックなど到底信じられない。
(モーニングコーヒーだなんて、格好付けちゃって…
単にあのおっさん、いざとなったら、カレンの若さと美しさにビビり、不能になっちゃったんじゃないの〜?)
麻紀はジョッキ残り1センチを、ぐびっと飲み干した。
麻紀が自分の話に賛同してくれていると勘違いしたカレンは、上機嫌だ。
「ね、カレン、お酒お代わりしたーい!麻紀さんもお代わりしますよね?
すみませーん!
バーボン、ロックで下さ〜い!
あと、生ビールのジョッキもね♡」
カレンがコップを持った手を振り回し、店員に合図を送った時。
「あの、すみません」
麻紀の背後から声がした。