お熱いのがお好き?
彼らは、実に紳士的だった。
クールな彼は麻紀に、パチっと片眼をつぶってみせ、「トマムの夜を楽しんで」と言って背中を向けた。
(あん….待ってえ….…)
去ってゆく2人の後ろ姿を見ながら、麻紀はその背中に縋り付きたい衝動に駆られた。
(悔しい〜せっかくあんなカッコいい男と飲めるチャンスだったのにぃ!)
麻紀はテーブルに突っ伏して、地団駄を踏んだ。
彼らはきっと最前線で働く若き企業戦士に違いない。
無慈悲なクライアントと、ムチャ振り鬼上司に挟まれながらも、へこたれず、職務を遂行し、周りの期待以上の実績を上げるのだ。
そんな彼らを笑顔と会話で癒してあげたかったのに。
麻紀の気持ちも知らず、目の前のカレンはニコニコしている。
さっきカレンはバーボンを頼んだけれど、いつのまにかボトルで飲んでいるではないか。
(えっ…それいくらするの?)
麻紀は青ざめる。
夕飯の寿司代を葉子に出してもらい、浮いた分でカレンにおごってやろうと思ったのに。
断りもなく、ボトルを頼むなんて…
麻紀のじっとりした視線から、かれんは何かを感じ取ったのだろうか。