お熱いのがお好き?


葉子は気が付かないわけではない。
わざとやっているのだ。


だから、麻紀も口では「ありがとうございます」と言いながら、葉子に背を向けた途端、眉をしかめ唇を歪める。


義理の親子関係となって10年。


こんな調子でずっと麻紀と葉子は、お互いに仮面を被り、良好な関係を演じ続けてきた。


それで良かったはずだった。

なんとかなっていたはずだった。



なのに、葉子は、麻紀を奈落の底に突き落とした……







子供たちは、空港ロビーに、約束の午前7時を5分早く到着した。


前夫の真和は時間にうるさい。

やはり、きちんと子供を送り届けてくれた。


父親の車で送ってもらった子供たちは、車の中で眠っていたのかもしれない。


3人ともさっぱりとした顔をして、ロビーの黒いソファーに座る麻紀めがけ、
「ママア!」と元気に走り寄ってきた。

3人ともリュックを背負い、水筒を斜めがけにして。


長男の竜聖は、青い携帯ゲーム機を片手に待っている。


隙あらば、ゲームをしようと思っているのだ。

半年に一度の母親との面会なのに、竜聖はいつもそうだ。





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