愛してくれないなら、殺してほしい


悲鳴ごと喰われる感覚。糸を引いた唾液すらも惜しいのか、また彼は唇を重ねた。


「や、だ……はなしっ」


彼の舌を噛む。
ようやっと呼吸が再開でき、肩を上下した。


「噛みきってくれればいいのに」


至極残念そうに、彼は言う。


「どうかしてる……っ」


「してますよ、あなたを愛してしまった時から。そうして、あなたが僕を嫌った時に如実となった」


枕元に置いたナイフが、彼の手に握られる。


「嫌うぐらいなら、殺してほしい。――これでも自殺しようとしたんですよ?でも、出来なかった。あなたが生きているからこそ、僕も生きたくなるんです。

僕の生きる理由であり死ぬ理由。ここまで人を愛したことを呪うべきなのに、あなた前にすると祝福すらもしたい――幸福(人生)なんだ」


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