愛してくれないなら、殺してほしい


「……、しない」


だから、“何を”躊躇したんだ。


握る手を開く。流すは涙。在るのは絶望にして、失望。


いっそ、私が死にたい心境となっているのに、見越した彼が両の手を掴む。


「なんで……」


私が聞きたい言葉を彼は反芻した。苦渋でも飲むような顔をして、掴まれた腕に痕が残るほど力を入れられた。


「あなたにこんなことする奴、苦しめる奴なんかいない方がいいのに、なんで……!――どうして“期待”させるんですか」


泣いたのは彼もだったか。小さな明かりではよく分からない。知る前に、彼の顔が私の首筋に埋もれる。


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