幼馴染み

八月十五日

バスに乗ること一時間半白百合村に到着した。

私は運転手にお礼をいい、八城村まで歩いた。

駅を出たのが午後の一時、実家に着いたのは5時だった。

『ただいま』と言っても誰も出てこない、これが田舎の恐ろしいところである。

扉は開けっ放し、一階、二階の部屋の窓は全開の状態で誰もいない。

東京ならまず事件になっていることだろう。

とりあえず荷物を置き、じいちゃんとばあちゃんに線香をあげると扉が開く音がした。

母さんかと思ったら隣に住んでいる花山のじいさんだった。

『おめぇ誰だ?泥棒か〜?』

と花じい(『花山のじいさん』)が大きい声で言い放った。

僕は慌てて『違います。真です。』と答えた。

花じいは少し疑った顔をしたあと笑いだした。

『なんだ真か、なんだか東京人みたいだなぁ。』

実際はそうなのだが、花じいは何度もおなじことを聞き返すので、曖昧な返事をした。

『花じい、母さんどこ行ったかわかる?』

『今日はたしか、旦那の信二の命日だから墓参りだべ。』

『そうだった。』

二十年前の八月十五日私がまだ五歳の頃、私と父と母の三人で母の実家に帰省中の時、事件は起こった。

あの日も夕日が紅かった。
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