幼馴染み
花じいに家の留守番を頼んで私は父の墓に向かった。

父の墓は家から車で十分くらいなので、家のオンボロ自転車(ちゃんと三島 真と書いてある)で墓までいった。

墓に行くと母がすでに線香をあげていた。私も母の隣で線香をあげた。

母は花じいの軽トラで来ていたらしく、帰りは自転車を荷台に乗せ家に帰った。

車に乗り込んで私は後悔した。母に車を運転させると、山道だろうが狭かろうが時速八十キロを維持する。

しかも、山道になると百キロを超す。という特殊能力を発揮する。

この能力は八城村の環境によるもので、

自動車がすくないため信号が無いことと、警察官が一人しかいないこと、小さいころ私を学校まで送る。というドライバーテクニックを上げた三つの要素を兼ね備えた技である。

四十六歳になってもこんな事をするなんて思わなかったが、『老いてなお盛ん』という言葉は母にぴったりのことわざであると感じた。

途中、物凄い音がなり後ろを振り向くと荷台にあった自転車が山から落ちていくのが見えた。

『母さん。自転車がおちた。』

しかし、軽トラは止まらない。

『母さん?』

『え?』

『自転車が落ちたから止めて!』
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