幼馴染み
『え?気のせいよ。』

と不吉な笑みを見せて軽トラはスピードをあげた。

母の口癖それは『気のせい』という言葉である。

この言葉と不吉な笑みを使う場合、母は必ず何かを企んでいる。

当たり前だが母は自転車が荷台から落ちたこともわかっている。

大方、私を下に行かせたい理由があるのであろう。

仕方なく私は『後で自転車をとりにいく』と言った。

家に着き、母はわざとらしく『あら、自転車がないわ。』と言い放った。

『山から落ちたよ。』と呆れた顔ではなすと、

『真の言ってた事は本当だったのね。母さん気づかなかったわ。』と家に入り、何か持ってきた。

『自転車を探しに行くならついでに神社のマコちゃんにお中元を持っていって?』と言った。

『最初からコレが狙いか。』と心の中で思い、自転車を探しに山を降りた。

母は父を失ってから私をさらに厳しく育ててくれた。

母が怖くて何度も祖母の懐に逃げ出し、祖母を盾にした。

しかし、何度怒られても最後に優しく抱きしめてくれる母が好きで嫌いではなかった。

母も私が憎くて怒っているわけでないことを小さい私でもわかっていたからだ。

山を降りること数分、自転車が見えてきた。
< 9 / 19 >

この作品をシェア

pagetop