おかしな二人


心の中で毒づいていると、依頼者が嘲笑を僅かに浮かべてあたしを見た。

「まず。その服装をなんとかしてもらえないかな」
「え?」

値踏みするように、上から下まで見たあと、今度ははっきりと嘲笑した。

感じ悪い事この上ない。
腸が、少しずつグツグツし始める。

けれど、相手はお客。
マネー、マネー。

心の中で歌うようにして、気を落ち着かせた。

時間がないから、とすぐ近くにあるショップに連れて行かれ、トータルコーディネートされた。
そんでもって、これまた近くにある美容院に駆け込み、飛び込みなのに無理矢理お願いしてブローまでされる始末。

弄繰り回されるだけ回されてるあたしって、どんだけいけてなかったんだ? と自尊心なんて、ウリウリと踏み付けられる。

その自尊心を足蹴にしたお詫びとでもいうのか、変身にかかった費用は全額依頼者もち。

あったりまえだぜ。
ケッ。

なんて、汚い言葉が、胸の中を満たしていく。


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