おかしな二人
仕事は午前中少し、と言っていたように、水上さんはお昼前に帰ってきた。
「行くでー」
玄関を開けたかと思ったら、そこに留まったまま中に居るあたしに声をかけてくる。
「えっ。そんな、速攻ですか」
慌てて貧乏コートを手にして玄関へと急いだ。
水上さんは、綺麗なおでこを出して黒縁の伊達眼鏡をかけ、私の半歩前を行く。
頭には、黒のニット帽。
もし、プロレスラーの目だし帽なんか被っていたら、その目力だけでやられそうな眼力を、今日は伊達眼鏡がやんわりと防いでくれていた。
通りに出るとタクシーを捕まえ、水上さんはさっさと乗り込む。
あたしも置いていかれないように、ササッと乗り込んだ。