おかしな二人
あたしは、半信半疑のままおんぼろコートを脱いで、店員さんに手渡されたコートを羽織ってみた。
それは、この先の寒さに向けても着られるように、裏地はキルト素材で取り外しのできる赤いタータン・チェック柄のコートだった。
膝丈ほどの長さのコートは、ウエスト部分が少しくびれた、Aライン。
身体のラインが綺麗に見えるタイプのもの。
しかも、赤の色が派手すぎず落ち着いているため、変に子供っぽくも大人っぽくも見えず、とてもいい感じ。
「可愛い」
あたしは、つい、大きな姿見に映る、そのコートを着た自分に向って恍惚と洩らした。
すると、斜め後ろの方から、水上さんがすかさず突っ込みを入れる。
「コートがな」
わかってるっつぅーの。
いちいち、念押さなくってもいいしっ。
あたしは、鏡越しに皮肉一杯の気持ちをなるべく表情に出さないようにしながら、口角を上げた。
だって、買って貰うのに睨みつけるわけにはいかないから。