おかしな二人
性質の悪い酔っ払い相手に、あたしは適当に応える。
「英嗣、早く乗って」
「おうっ」
なんとも、素直。
呼び捨てにした途端、おとなしくタクシーに乗り込んでくれた。
世話の焼ける子供です。
やっとの思いでタクシーに乗せ、マンションの場所を運転手さんへ告げた。
水上さんは、何故かご機嫌でシートに深く座り鼻歌なんか歌っている。
それがなんの歌かは知らないけれど、とにかく陽気なナンバーのよう。
しかし、十分も経つと脳みそがアルコールに浸されたのか、鼻歌も止まり瞼が下り始めた。
「寝ててもいいですよ。着いたら起こしますから」
「おう」
素直に返事をしつつも、敬語はあかん、と消え入りそうに呟いてから、静かな寝息を立て始めた。