おかしな二人
二階には、テーブル席とカウンター席の二種類があり。
依頼者と思われる男が、少し陰になっているテーブル席にこっちを向いて姿勢よく座っていた。
その手足は長く、コーヒーカップをもつ指はピアノでも弾きそうなほど長く綺麗。
サラサラの髪の毛に通った鼻筋。
嫌味にならない程度の二重が、茶色の瞳を際立たせている。
そして、薄い唇は、昔の記憶を甦らせ、背筋に悪寒が走った。
その姿に、あたしは息を飲む。
そして、そのままカップを持って回れ右。
たった今上ってきた階段を、降りようと踏み出した。
「明」
けれど、その行動を止めるのに充分なほど、落ち着いていて、なのに強制的な声があたしを呼んだ。
あたしは、反射的にビクリとしてその場に留まる。
「あかり」
もう一度、ゆっくり放たれた自分の名前に、あたしは振り向かざるを得なかった―――――。