おかしな二人
「しまったぁ……」
水上さんに買ってもらったコートを、カフェに忘れてきてしまった。
コーヒーカップを律儀に下げて、自分のコートを忘れていたんじゃ世話がない。
ガクリと項垂れ、どうするかと一瞬迷ったけれど、クルッと方向転換する。
せっかく買ってもらったコート。
取りに行かないわけには、いかない。
「あ゛ーっ。あたしのバカバカバカ!」
ポカポカと駅の構内で自分の頭を叩いていると、駅を利用するたくさんの人たちが、怪訝な顔で見ていく。
きっと、頭のおかしな子がいると思われているのだろう。
それもこれも、全部凌のせいだっ!
ふんっ! とまたも鼻息を荒くして、ズンズンと足を前に出し、カフェへの道を戻った。