おかしな二人
懐かしく微笑ましい過去


                *


映画を観るために、渋谷へと向かうことにした。

凌は近くのコインパーキングに駐めてあった車を回してくると、あたしを助手席へと乗せる。
それは、水上さんの車とは違って、左ハンドルの外車だった。
車が走り出してすぐに、あたしは問いただす。

「てか、凌」
「ん?」
「あんた、今何の仕事してんの?」

こんないい車に乗っちゃって。
羽振り、良過ぎだし。

「俺、今雑誌のモデルやってんだけど。明、知らなかったの?」
「え?! モデル?」
「うん。速水凌の名前でメンズ雑誌とか、諸々。最近は、服着るだけじゃなくて、インタビューなんかも受けてんだけどね」

凌が、モデル?!
ありえないんですけどっ。

つか、いつから?
まったく知らなかったんですけど。

て、あたし、貧乏だから雑誌なんか買ってる余裕なかったけどね。
コンビニでも真面目に働いていて、雑誌を盗み見ることもしなかったし。
少しくらい見ておけばよかったかな。


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