おかしな二人
「借金て……。まだ、あったのか? 生命保険で全額返済できたはずだろう?」
「生命保険なんて、途中で払えなくなって、解約しちゃってたもん」
「そう……だったのか。ごめん、マジ知らなかった。俺は、とっくに借金なんかなくなってるものだと……」
凌は、借金が残っていた事実を全く知らなかったようで唖然としたように言い、そうして落ち込んでいった。
あの頃、奨学金で大学に入った凌は、早々に家を出ていた。
大学生になってすぐ、父と盛大に喧嘩をしたのが原因というか、出て行く切欠となった。
毎日のように酒に溺れ、仕事もせず、借金ばかりを増やしていく父に、我慢ができなくなった凌は、真面目に働け、と何十回目になるか分からないセリフを投げかけていた。
父は、その何十回目になるか分からない凌の言葉に、同じように何十回目になるか分からないセリフで言い返す。
「お前に何がわかるっ! いいから、金と酒をもってこい!」