おかしな二人


満員電車のように混み合った、スクランブル交差点の信号待ち。
いくつかの巨大スクリーンでは、洗脳するかのように絶えず音楽や映像を流し続けている。

ぼんやりとその大画面を見ていると、コートのポケットの中で携帯が震えだした。
取り出してみると、水上さんの名前がディスプレイ上に表示されている。

凌に、少しだけ背を向けるようにして携帯を耳に当てた。

「もしもし」
『――――……や』

「え?」
『……――――や』

「ええっとぉ……」

水上さんの声は街の喧騒のせいで、同じ日本と思えないほど遠く聞き取りにくい。

「え? あ、ごめんなさいっ。ちょっとよく聞こえなくって」

あたしは、一生懸命耳に携帯を押し当ててみたけれど、水上さんの声はそれでも聞き取りにくい。

しかたなく、信号が青になったところで携帯をいったん耳から離し、凌へ先行く、と告げ、たくさんの人にぶつかりそうになりながらも、なんとか急いで交差点を渡った。



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