おかしな二人
過剰な心配


                *


外に飛び出し、大通りへ急ぐ。
タクシーの空車を目ざとく見つけ、飛び込むように乗り込んだ。

行き先を告げてから、心許ない財布の中身を確認する。
なんとか、ギリギリでマンションまで辿り着けそうだ。

ひとまず、マンションに着くまでの工程には抜かりなし、と息を吐き窓の外を眺めた。
街は、まだまだ宵の口という感じで、人も車の往来も激しい。
乗っているタクシーと併走するセダンのタイヤの回転を、意味もなく眺めながら、全く水上さんにも困ったもんだよねぇ。なんて、誰にともなく語り口調。

なぁんで、十時に帰宅しなくちゃいけないんだ?
早く帰ったからといって、特にすることもないのにさぁ。

留守の間もお給金が発生しているから、従わないわけにはいかないんだけど。
こう門限みたいにされちゃうと、留守の間、便利屋の仕事がしづらくなっちゃうよ。

副業の便利屋とできるだけ平衡して稼ぎたかったのに、算段が崩れそうだ。


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