おかしな二人


残念ながら、あたしの相手をしてくれるようなお方はだーれもおりません。

卑屈に思い、頬を引きつらせる。


『そぉかぁ。一人なんやな』

念を押すように訊ねる水上さんに、そうですよぉ、と応える。

「水上さんは、今日のお仕事もう終わりですか?」
『おう。終わりや』
「お疲れ様でした」

あたしが労いの言葉をかけると、ええ加減敬語はやめろや。何度言ったらわかんねん。と若干呆れたような声で言われる。

おぉ、そうだった、そうだった。
おつむが弱いんで、すーぐ忘れちゃうんですよねぇ。
それに、主従関係があるせいで、つい敬語が出てしまうっていうのもあるんですけどね。

「ところで、何か用事?」

敬語禁止令の手前、用事? なんて、馴れ馴れしく言ってみたけど、やっぱりちょっと抵抗がある。

凌にだったら、いくらでも言えるんだけどなぁ。
まぁ、奴の場合いじめられた恨みのせいもあるけれど。


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