おかしな二人
あたしの、切ない家庭環境など水上さんは知る由もないのだし。
多少不本意に思いながらも、雇い主にヘラヘラと笑いを浮かべて見せる。
「ゆうてみぃ。え・い・じ」
などと、何も知らない雇い主様は、呼び捨てを強制。
ゆうてみぃ、と言われましても、命綱のないバンジーでもするくらい呼び捨てなんて、命知らずな言動ではございませんか。
躊躇しているあたしのことなど気にもせず、強引に促してくる。
「はよ、呼ばんかいっ!」
終いには、怒りはじめた。
仕方ない、きっと酔っているんだ。
今だけでも、そう呼んでおこう。
明日になっても英嗣なんて呼んだ日には、きっとグーパンチで鼻血ぶーだろうけど。