おかしな二人


友達も恋人も、まして家族も居ない……おっと、凌はいるけど問題外ね。
そんなあたしが、クリスマスに予定などあるはずもない。

しいて言えば、水上さんが大阪へ行っている間に買った、あれを渡す事ができればいいかな、と思うくらいだ。

あてがわれた部屋の、備え付けのチェスト。
その小抽斗の隅に、ちょこんと納まり続けている物を思い浮かべると心の隅が疼く。
その疼きを紛らすように、あたしは大袈裟な振る舞いをした。

「あたしがクリスマスに予定なんて、あるわけないじゃないですかー」

ゲラゲラゲラと下品な笑い声をあげ、オバちゃんのように右掌をクイクイッとお辞儀させる。

その姿を見て、水上さんが、アホかっ。と呆れて零しつつも笑顔を見せる。

「そーかぁ。ほな、いってくるわ」
「行ってらっしゃーい」

いつものように見送り、玄関の戸が閉まったあと回れ右をしてから気付く。

あれ?
結局、水上さんてお仕事はないみたいだけど、クリスマスはどうするんだろう?
あれを渡すタイミング、あるかな?



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