おかしな二人
けど、凌に至っては、きっとろくでもない苛めが待ち受けているのは火を見るより明らか。
幼い時の厭な記憶が、走馬灯のように脳内を駆け巡る。
ファーストキスを奪われた、あの忌々しい出来事までが鮮明によみがえってきた。
何故あの時、素直に言う事を聞いて目を閉じてしまったのか、自分の行動を呪うほどだ。
それにこの前のバーの時だって、何で抱きついてきたのか……。
あのまま、もし水上さんがあそこに現れなかったら、二度目のちゅーをされていたかも知れない。
そう考えると、鳥肌が立ち血の気が引いて行く。
凌の脳みそがどんな仕組みになっているのか知らないけれど、あいつは少なくとも妹に平気でキスや抱擁ができてしまう、おかしな思考の持ち主だ。
一度病院へ行って、よぉーく診てもらったほうがいいんではないだろうか。
もしかしたら、脳内にカブトムシくらいは住んでいるかも知れない。
今度スイカでもプレゼントするか。
いや、待てよ。
今時期スイカは高いから、きゅうりで手を打とう。
うん。そうしよう。
って、同じウリ科だけど、カブトムシってきゅうりじゃ駄目か?
まぁ、いいや。
とにかく、明日はできるだけ距離を取っておかないと、いつ魔の手が伸びてくるかわかったもんじゃない。
くわばら、くわばら。