おかしな二人
一度、酔いつぶれていた父が、あたしと死んだ母親を勘違いして抱きついてきたことがあった。
それは、抱きつくというよりも、縋りつくという感じで、父の頬には涙があったのを憶えている。
父は、辛かったんだろう。
二度も、最愛の人を亡くして、辛かったんだろう。
凌も、それを感じ取っていたんだろう。
あたしは、凌がいじめを始めたのは、寂しさから来る嫉妬だったんだと今では思っている。
本人に自覚があったかどうかは別にして、父親があたしだけを可愛がる事に嫉妬していたんだと思う。
その時には気づくはずもなかった幼いあたしは、ただ凌の苛めが嫌で嫌で仕方なかった。
だから、凌に誘われても山崎の家を出たくなかったんだ。
父親が、あたしに手を上げないとわかっていたからこそ、余計にあの家に留まったんだ。