おかしな二人


半歩前を行く凌の後ろをついていくと、五分ほど歩いたところで凌が立ち止まり振り返った。

「この前の、続きだけど……」
「この前?」

「やっと、再会できた、相手……」
「ぁあ……」

バーの前で話していたことだ。

凌がずっと想っていた人。
奈菜美さんをふってまでも、気持ちを抑え切れなかった相手。

あの時、凌はあたしを抱きしめた。
辛そうに、少しだけ、と言って……。

もしかして、その相手って――――。

「凌、その人って、あたしに似てるの?」
「……え?」

凌は、驚いたように目を大きくする。

「だって、あたしなんかに抱きついてきたから……」

あの時の切なそうな瞳は、山崎の父に似ていた。
母を想ってあたしに縋りついた、父の目に。
母の影を追い求める、父のようにみえたんだ。

だから、凌も、きっとあたしに似た人を想って――――。


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