おかしな二人


「ごめんなさい。今からすぐ帰ります」

その言葉に、凌が眉間に皺を寄せ振り返る。

「あかり。帰るって、どこに帰るんだ?」

しまったっ!

一人暮らしをしているはずなのに、帰るなんて言ってしまった。
一体誰と暮らしているんだ、って話よね。

「えっと……」

あたしは、凌に向かって顔を歪める。
その表情に負けないほどに、凌も顔を歪めた。

『あかり?』

電話の向こうでは、話が途切れてしまったせいで水上さんが呼びかけてくる。

「えっと。ごめんなさい、直ぐです。直ぐに帰りますから」

あたしは、水上さんのいつもにない雰囲気が気になりながらも、言うだけ言って電話を切った。
だって、目の前の凌が苦しげに顔を歪めたままで居るから。


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