おかしな二人
「やっぱり、勘違いされたくない相手がいるんだな……」
けほっと、小さな咳をしたあと、凌がポツリと悲しげにもらした。
「違うよ」
えっと、なんて言えばいいんだ?
もう、こうなったら正直に住み込みしてるって言ったほうが、話がややこしくならずに済むか。
「あのね、凌。実はね、あたし住み込みのバイトしてるの」
「住み込み……」
「うん。それで、その雇い主があんまり帰りが遅いんで心配してるって言うか……」
あはは、なんて笑うと、凌の顔が安堵したように緩んだあと、またすぐにしかめっ面になった。
「なに? 住み込み!?」
「あ……ぅん」
「そんな仕事してるのか? 電話の相手は、どんなやつなんだ? どんな家に住み込んでるんだ? 手を出してくるような男は、居ないのか?」
捲くし立てるように凌が訊いてくる。
そうだった、こういうのが煩いと思っていたから話さなかったんだ。
水上さんからの電話に焦って、つい考えなしに口を滑らせてしまった。