おかしな二人
「明、乗って」
凌に促されるまま乗り込むと、自分は乗らずにあたしに一万円札を握らせる。
その手が、やけに熱い。
「凌は?」
「俺、逆方向だから」
「そうなんだ。わかった。じゃあ、今日はありがとう」
「うん。また、食事しよう」
「ああ、うん」
あまり気乗りはしないものの、とりあえず首を縦に振る。
シートに座り、風邪がひどくならなければいいけれど、と凌の身を案じた。
なんだかんだ言っても、心配をしてしまうのは、やっぱり家族だからだろうか。
閉まったドアの向こうでは、凌が寂しそうに目を伏せていた――――。