おかしな二人
小さな声で呟いたつもりが、その声に反応するように水上さんの睫がゆっくりと持ち上がった。
「あ、起こしちゃった。ごめんなさい」
「んぁ。……おう」
少し寝ぼけているようで、まだ状況を理解できていないらしい。
このままいけば、門限ぶっちぎってしまった事を怒られずに済むかも。
なんて、甘い考えでいると、無機質な声がかけられた。
「遅かったやん」
それは、まるで機械音声。
あらかじめ組み込まれていたデータみたいに、感情の伴わない言い回しだった。
逆に、それがいつも以上の恐怖を感じさせる。
「ごめんなさい」
今度は、遅れたことに対して頭を下げる。
「兄貴とのメシは、さぞ楽しかったみたいやな」
むくりと起き上がると、水上さんはさっきとは打って変わって、丸々嫌味に聞こえる言い方をした。
「楽しかったっていうほどでもないですけど。まぁ、それなりに……」
あたしは、恐縮至極で身を縮める。
だって、早く帰るなんて言っておきながら門限まで無視して、悪いのはあたしだから。