おかしな二人
ギターを抱えた水上さんは、なにやらメロディを口ずさんでいる。
ギターは、アコースティックギターじゃないから、響き渡るような音はしない。
どちらかと言えば、控えめで硬い金属の音だ。
それでも、流れるメロディーは聴き心地がよく、それにそっと添えられるように口ずさむ声はしっとりと艶がある。
この部屋を掃除するたびに、立て掛けてあるギターを見て、弾くんだろうな、とは思っていたけれど、実際目にし耳にするのは今日が初めてのことだった。
歌も上手だなぁ、とテレビで見たときに思ったけれど、ギターもお上手なのね。
あたしは洗濯物を回収したり、散らかっている雑誌を整えながら、水上さんが奏でる曲に耳を傾ける。
ベッドメイキングを先にしたいけれど、デンと座ってギターを気持ち良さそうに弾いているのを邪魔できず、ワサワサと掃除機をかけながらその姿を見ていた。
すると。
「五月蠅くて、音が聴こえへん……」
顔を顰められた。
「ですよねぇ……」
いくら最新の掃除機だとはいえ、全く静かなわけじゃない。
スイッチを一旦切って、あたしは苦笑いをヘラヘラと浮かべる。
ヘラヘラしたあたしの顔を一瞥したあと、水上さんは胡坐を崩すとベッドから降り、ギターを抱えたままリビングへ行ってしまった。
聴こえなくなってしまったメロディーを、あたしはなんとなく残念に思う。